さなぎ長文

けいば 妄言

まえがきー僕は鉄火場で虚無をする

 

 

おだやか


  

 

 
 数年前から公営競技の観戦と投票を趣味にして僕はどれだけの思い出を作ったのだろう。幾度の情景と数多のレースを見て聞いて今僕はここに居る。すべてはやがて虚無になり、あと僕は不器用だから虚無を考えることしかできない。
 やがてやがてはすべて終わるんだけれど、すべてのレースは終わり果てて地球さえ滅びていくんだけれど、確かにかつてこの国には星の数ほどの馬や、艇や、自転車や、二輪のレースが行われ、おのおのパルミチュエル方式で決められた払い戻しに則って誰かが損してだれかが得をし、誰かが名誉を受け、誰かが脇役になる。
 僕はそのうちの何万分の一を見れるのだろか。それともここから先何も見えなくなるのであろうか、そして僕は何を得られるのであろうか、何も得ることはできないのか。残念ながら馬券師諸君先生方に申し訳ないがここで記されるのは回収率や払い戻しの話じゃない。僕はどのような情景をこの鉄火場たちから得られるのだろうか。それを考えている。そして今からやりたいことはそれを記述することである。見たことのないものを見たい。そしてみたいをずっと見ていたい。それが僕にとって美しくて、でも不器用だから虚無ってしまうのだ、やがてはもう、何でも。